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レンタルハウスツアー

INTRODUCTION

CRISPY EGG Galleryでは菊谷達史企画『レンタルハウスツアー』を開催します。

 

参加作家は菊谷達史、四井雄大、山岸耕輔の三名です。

 

本展は菊谷、四井、山岸の三名が自身の作品を担ぎながら、貸家を転々とするツアー(=旅行)として三会場を巡ります。あてもなく未知の世界を体験する「旅」ではなく、パンフレットや旅行雑誌などによって既に知られている場所をあえて巡る行為である「旅行」。その言葉を展示名として選択したところに、彼らの「展示」という形式に対する考えが現れていると言えます。

 

彼らの制作した旅行パンフレットには各作家、各展示場の説明が紹介され、鑑賞者は一体何を見るべきなのかが予め告知されています。会期は三度に分かれますが、変化するのは会場であって、作品は変わらず、作家たちによって持ち運ばれ各会場を巡っていくのです。

 

菊谷、四井、山岸の三名は美術搬入業者としてのアルバイト経験があります。彼らは自身が作家として活動する傍ら、作者の手を離れた美術品が空間から空間へ移動してゆく流れを覗き見てきました。

一般的な鑑賞者にとって展示は特定の場所への移動を意味しますが、業者として働く彼らにとって、展示は港に停泊する船のように、来てそして去っていくものとして見えています。

 

彼らが会場全てを巡ることで完成する本展は、それそのものが作品であり、展示の形式を批評する試みだと捉えることができるかもしれません。

 

会場は横浜、相模原、金沢の三会場。

1期は横浜の三渓園・旧燈明寺本堂(10/31~11/3)、2期は相模原のCRISPY EGG Gallery(11/6~11/21)、3期は金沢の北石坂工芸(仮)(11/24~11/28)を移動しながら展示を開催してまいります。

 

約一ヶ月にわたる移動展覧会をぜひともご高覧いただけたら幸いです。

2020年9月

CRISPY EGG Gallery

石井弘和

INFORMATION

【1期】横浜三渓園・旧燈明寺本堂

[日程]

2020年10月31日(土)〜11月3日(火/祝)

[場所]

横浜三渓園・旧燈明寺本堂

https://www.sankeien.or.jp/access/

〒231-0824 神奈川県横浜市中区本牧三之谷58-1

[時間]

10月31日 14時〜17時

11月1日〜2日 9時〜17時

11月3日 9時〜15時

[入場料]

700円(三渓園入場料)

[アクセス]

・根岸駅から 1番のりば 《市バス58・99・101系統》約10分 本牧下車・徒歩10分

・横浜駅から 東口2番のりば

《市バス8・148系統》約35分 三溪園入口下車・徒歩5分
《ぶらり三溪園BUS》(土・日曜日・祝日限定運行)約35分 三溪園下車

・桜木町駅から 2番のりば 

《市バス8・148系統》約25分 三溪園入口下車・徒歩5分
《ぶらり三溪園BUS》(土・日曜日・祝日限定運行)約25分 三溪園下車

・元町・中華街駅から 4番出口そば山下町バス停

《市バス8・148系統》約15分 三溪園入口下車・徒歩5分

※ 横浜発 横浜市営バス8系統および148系統のバスは、桜木町、山下町を経由して走ります。
※ 横浜発 横浜市営バス148系統のバスは、急行のため同じルートを走る8系統よりも所要時間が5分ほど短くなります
※ ぶらり三溪園BUSは土・日曜日・祝日限定の運行です。8系統、148系統とルートが異なります。
※ 詳細は横浜市交通局ホームページをご覧ください。

【2期】CRISPY EGG Gallery

[日程]

2020年11月6日(金)〜21日(土)

金土日のみOPEN

[場所]

CRISPY EGG Gallery

神奈川県相模原市中央区淵野辺3-17-5

[時間]

14時〜19時​

[入場料]

無料

[アクセス]

JR横浜線 淵野辺駅から徒歩4分

MAP

【3期】北石坂工芸(仮)

 

[日程]

2020年11月24日(火)〜29日(日)※リーフレットには28日と記載されていますが、正しくは29日です。

[場所]

北石坂工芸(仮)

石川県金沢市野町2-33-8

[入場料]

無料

[アクセス]

JR金沢駅より徒歩20分 北鉄バス兼六園⑧⑨⑩番のりばより「片町」下車 徒歩5分

※ 1期2期のお問い合わせ先はCRISPY EGG Gallery、3期は菊谷達史となります。

STATEMANT

レンタルハウスツアーまでの経路

 

『レンタルハウスツアー』は、神奈川県と石川県の三会場を巡回する三人展である。参加作家はぼく菊谷達史。過去にTARO賞でコラボした陶芸家の四井雄大。同じ金沢美大油画出身でこの春から東京藝大大学院メディア映像専攻に通っている山岸耕輔の三名。誤解されがちなので最初に説明しておくと、本展は三会場で三人がリレー形式で個展(一人展)をしていくのではなく、三人展を三回やるという企画である。作品に多少増減はあるかもしれないが、基本的にはどの会場でも同じ作品を展示する予定だ。会場は横浜市三渓園に移築された「旧燈明寺本堂」、相模原市にある本展主催のコマーシャルギャラリー「CRISPY EGG Gallery(以下CEG)」、そしてぼくらのホームグラウンド、石川県金沢市にある四井の自宅兼陶工房「北石坂工芸(仮)」の三ヶ所だ。
 

 CEGの石井さんから「横浜市の三渓園にあるお堂で展示をしませんか」と話を貰ったのは昨年の六月のことだった。CEGは六畳一間の古い主屋を改修したギャラリーでその性質上、現代美術の大きな特徴の一つである大型作品の展示が難しい。その打開策としてCEGは外部に別のスペースをレンタルし、作家に展示の機会を提供している。つまり本展は三渓園で大きく作品を展開した後、CEGでその「縮小版」を巡回する所までが企画の前提となっている。

 三渓園は近代日本の実業家、美術品蒐集家、美術家のパトロンでもあった原三渓によって1906年に造園された。昨年は生誕150年・没後80年を記念し『原三溪の美術』と題した展覧会が横浜美術館で開催された。ぼくもこの展覧会に足を運び観賞後にはそのまま三渓園へ向かった。広大な園内には京都や鎌倉などから移築され古建築が数多くあり、第一会場である旧燈明寺本堂もそのひとつだ。元々京都府木津川市にあったこの本堂は、1947年台風で大破。三渓が生前、燈明寺三重塔を保存の為に購入し、三渓園へ移築していた縁もあり、1987年に本堂も移築されている。現在は重要文化財に指定されつつも「文化的催事」の為のレンタルスペースとして貸し出されている。本展はこの場所をCEGが借りる事で実現している。

 金沢市での第三期は、ぼくたち三人が石川県金沢市を拠点としている為「どうせなら」と追加された(正確には唯一の金沢出身の山岸が今月展覧会に先んじて横浜へ移住したので、今は菊谷と四井が拠点としている)。「北石坂工芸(仮)」は金沢市の繁華街片町の目と鼻の先にある。徒歩10分弱のところには観光スポットとしても人気の現代美術館、金沢21世紀美術館があり、現在は『ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース|ダブル・サイレンス』展が開催されている。高名な海外作家の作品を近所で見られるのはたいへん有難いことだ。観客が作品をみる為に赴くというのが近現代美術鑑賞の基本だが、時にはボレマンスやマンダースの様に作品の方からこっちに来てくれる事もある。これがSANNAの建築やレアンドロのプールと一番ちがう点だ。展示にせよ、収集にせよ、移築にせよ、「可搬性」がそれを可能にしている。そう考えると、美術館やギャラリーというのは作品と観客が出くわすターミナルの様にも思えてくる。


 展示の話を貰うというのは、言い換えれば何か持ってきてと頼まれるということだ。それが物質的であれ非物質的であれ。特定の期間、特定の会場に何かしらを搬入し展示/陳列するという営み。ぼくたちは車に乗って各会場へ作品を運ぶ。どのタイミングでどの会場から訪れても問題ない。旅行のついでに会場へ、もしくは来場のついでに観光地へ是非足を運んでみてほしい。

2020年9月

菊谷達史

​『レンタルハウスツアー』フライヤー
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​下記PDFボタンを押すと『レンタルハウスツアー』フライヤーPDFがダンロードできます。

ARTISTS

菊谷達史

KIKUYA SATOSHI

菊谷達史は1989年北海道生まれ。

2013年に金沢美術工芸大学大学院を修了後、金沢を中心に活動。

菊谷はごくありふれた日常風景を多く描いている。それは過去多くの画家たちが繰り返し描いてきたモチーフであり、観賞者はそのモチーフの選択に日本のいわゆる「洋画」的凡庸さを感じ取ってしまう。

油絵の画家でありつつも西欧的な立体感や装飾性を排し、日本的油絵を追求した児島善三郎のような筆致で描かれた風景。日本の油絵の原点である高橋由一へのオマージュのシリーズ。いずれの作品も、身近でかつ素朴なテーマの作品のように見ることができる。

しかし、単に近代日本洋画家たちの積み重ねを踏襲しているのではなく、菊谷はそのことに対して極めて自覚的で、批評的な視点を常に作品に重ねている。

繰り返し身近なモチーフが現れるのは、彼が北海道で生まれ、油絵という素材を使い、金沢で活動する、という生い立ちや制作スタイルが関係しているのかもしれない。

 

例えば、2017年『Indoor landscape』展では北海道の農民として生きた神田日勝の代表作「室内風景」を意識した展示であった。

「室内風景」では部屋で座り込む神田の周りに新聞記事がびっしりと貼り巡らされている。この絵は、新聞などのメディア(媒介物)を通して北海道というローカルな地から世界をみている気になっていた神田が、「世界と対峙しているつもりであったが、もしかして自分と世界は全く関係がないのでは?」と不安を感じているかのような作品だ。

​高橋由一のように原点でもなく、児島善三郎のように権威でもない。北海道で活動するローカルな画家を選んだところに、展示当時の菊谷の心境を見て取ることができる。

 

2020年に開催された『回想的作話のレコーディング』では、「漂着物とテトラポッドのある海景」という作品を発表。

本作は一見すると、普通の人気なの無い海岸の風景のように見え、そのタッチも彼の得意とする児島善三郎的風景画のようだ。

しかし、制作年をよく見ると2020年5月であることがわかる。まだ記憶に新しいが、この月はコロナ流行に伴う日本政府による、外出自粛期間中に制作られたものなのだ。

その人気の無さは、つまりは外出姿が見られぬ用に人目を避けた結果であり、また素早く描かれた筆致からは、早くその場を離れようとまるで風景を盗むかのようにして描かれたことが想像できる。

 

菊谷の作品は、作品とその背景が不可分に繋がっており、それら全体が菊谷のメッセージなのだと言える。

 

菊谷の作品を見る時、空間的にも時間的に広がりを持つ、独特の批評的態度を感じ取ってもらいたい。

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 『漂流物とテトラポットのある海景』2020・Oil on canvas・652×530mm
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『漂流物とテトラポットのある海景』制作風景(能登半島某所にて)
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菊谷達史のスタジオ「急傾舎」の様子
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「Indoor landscape」(2017/CRISPY EGG Gallery)展示風景

【作家略歴】

 

菊谷達史

KIKUYA Satoshi

 

1989北海道稚内市生まれ

2011金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科油画専攻卒業

2013金沢美術工芸大学大学院修士課程美術工芸研究科絵画専攻油画コース 修了

 

[個展]

2018『Play a role』(創治朗/兵庫・伊丹)

2017『タッチアンドストローク』(ルンパルンパ/石川・野々市)

2017『Indoor landscape』(CRISPY EGG Gallery/神奈川・淵野辺)

2015『サーモンピンクと黒い花』(ASAGI ARTS/東京・銀座)

2014『Fertilizer』(ギャラリー点/石川・金沢)

2014『月とグレープフルーツ』(金沢アートグミ/石川・金沢)

2013『UNDRAMATIC』(gallery COEXIST-TOKYO/東京・木場)

2012『FLAME REACTION』(ギャラリー点/石川・金沢)

2011『DRIED FLOWER』(Gallery O2/東京・南馬込)

2010『LITMUS』(Kapo gallery/石川・金沢)

[グループ展]

2020『回想的作話のレコーディング』(CRISPY EGG Gallery/神奈川・淵野辺)

2019『The Optic nerve and The Devices』(CRISPY EGG Gallery/神奈川・淵野辺)

2017『VOCA2017』(上野の森美術館/東京・上野)

2016『シェル美術賞 アーティスト セレクション (SAS) 2016』(国立新美術館/東京・六本木)

2015『港で出合う芸術祭 神戸ビエンナーレ』(メリケンパーク/兵庫・神戸)

2015『第18回岡本太郎現代芸術賞展』(川崎市岡本太郎美術館/神奈川・川崎) ※「菊谷達史と四井雄大」名義

2014『菊谷達史・福田邦男展』(ガレリアフィナルテ/愛知・名古屋)

2014『虹の麓 -反射するプロセス-』(名古屋市民ギャラリー矢田/愛知・名古屋)

2011『Nomadic circus troupe』(北海道立近代美術館/北海道・札幌)

2010『アウトレンジ2010』(文房堂ギャラリー/東京・神保町)

[その他]

2020『ゲンロンカオス*ラウンジ新芸術校第5期最終選抜成果展「プレイルーム」』(ゲンロンカフェ/東京・五反田)

2019『ゲンロンカオス*ラウンジ新芸術校第5期生展覧会グループA』(カオス*ラウンジ五反田アトリエ/東京・五反田)

2019『3331 Art Fair 2019 ‒Various Collectors' Prizes‒』(3331 Arts Chiyoda/東京・外神田)

2018『PREVIEW AiPHT』(パークホテル東京 25F& 31F/東京・新橋) 

2018『蒐集衆商』(Spiral Garden/東京・南青山)

2017『Kanazawa Newly arrived Art&Craft 2017 by Rempah Rempah』(Spiral Garden/東京・南青山)

2016『日本・ベルギー国際交流美術展  - WEWANTOSEE - 』(金沢21世紀美術館市民ギャラリーB/石川・金沢)

2016『アートツーリズムへの発地』(THE SHARE HOTELS HATCHi/石川・金沢)

2016『四井雄大個展』(ギャラリー数奇/愛知・犬山)肖像画を制作

2015『あきたアートプロジェクト-急がば廻れ-』(アトリオン・茜屋珈琲店/秋田・秋田)

2015『アーティスト・イン・レジデンス東海さるく』(リバーパル五ヶ瀬川/宮崎・延岡)

2015『3331 Art Fair 2015 ‒Various Collectors' Prizes‒』(3331 Arts Chiyoda/東京・外神田)

四井雄大

SII YUDAI

四井雄大

SII YUDAI

1987年 岐阜県生まれ。陶芸家。

2015年には「第18回 岡本太郎現代芸術賞展」にて菊谷達史とともに入選。

 

四井は、マテリアルやマチエール、形態への美的追求を試みるようなものではなく、現代的な食事や焼き物の文化そのものを問い直ししている作家である。

バナナを持ち運ぶための入れ物やハンバーガーを縦に並べるための器。弁当の中にある敷居として使われる葉っぱを模した「バラン」。それを陶器として作成し直すなど、食文化としても陶器としても正式に認められていないものを再発見し、問い直す。

 

例えば、ハンバーガーの器の作品。ハンバーガーは肉をパンとパンで挟み、購入時には紙に包まれて出される。これは、車に乗ったまま、手を汚さずに片手で食事をすることを目的として開発されたからであるが、そのような食の形式が育まれた背景には、アメリカの車文化があることはよく知られていることだろう。しかし、そのような背景を持つハンバーガーを、車で食べることなく持ち帰り自宅で座って食べる、または店内で食べる。そのような時、全く別の「片手で食べる新たな食のスタイル」があり得てもいいはずだ、というifをテーマとした作品がハンバーガーの器である。

また、別の作品に「底つきバラン」という作品がある。普段の食事では全く意識しないバラン。現代では、ただの弁当箱の仕切りとしか機能していない、この一枚のプラスチックの紙だが、

植物の形態をしている以上、その紀元は柏餅の柏のような葉っぱの皿だったのかもしれない。

今でも葉っぱが皿である文化は多くの地域で生きており、このバランもそのような歴史を経て今の形へと変化したと考えられる。

だとするならば、このプラスチック性植物のバランを、本来あるべき皿としての機能を取り戻すためにはどうしたらいいのだろうか?という観点で、バランに皿の「底」を与える作品を作っている。

 

食が変化すれば器も変化していく、という極々自然な発想が、ややもすれば器の工芸的美しさに目を奪われて見失いがちである。既成化された食文化のなかに、新たな器のあり方を再発見し再構成する四井の作品は、陶器を多く見てきた観客にこそ見ていただきたい。

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2019「展でのふるまい」あをば荘(東京)での風景
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【作家略歴】

 

四井雄大

SII Yudai

 

1987年 岐阜県大垣市に四井家の長男として生まれる。

1988年 岐阜県本巣郡巣南町(現瑞穂市)に移住。高校卒業まで過ごす。

 

2001年 studiorecord陶芸教室受講開始。小澤先生に出会う。

以降主なインプットとして任天堂に傾向しながら、主なアウトプットとして陶芸を信仰。

2006年 金沢美術工芸大学工芸科入学。金沢に移住する。古納屋でバイト。

2010年 美大卒業。卒展と古納屋でのW個展。岐阜県各務原市に移住。自動車免許取得。

2011年 岐阜駅にて陶芸教室バイトと並行して円相のバイトも継続。カレー界隈と出会う。ギャラリー点個展。

2012年 金沢の真福院に入居し、自炊をインド料理に縛る。問屋まちスタジオで制作開始、ちょくちょく展示。

2013年 真福院の工房利用開始。コーポレートアート展「陶展」他、展示活動は複数名を好みがちな傾向。

2014年 インド料理生活の継続、初のインド旅行からの住人の振る舞い開始。堀至以との「TRACE2」等の展示。

2015年 菊谷達史と共闘し、第18回岡本太郎現代芸術賞入選、展示。住人の振る舞い2015を真福院にて隔月開催。

2016年 ギャラリー数寄での初個展。イナダ氏とうえだ氏とチームを組みTEI-EN企画始動。

2017年 工房を野町のキタイッサカに移し、堀江たくみと共同生活&制作をはじめる。土間〜ケット開催。

2018年 鍛冶町倉庫展と月映展からはじまり、悩ましさのなかバイト漬け。

2019年 年始のギャラリー数寄個展の際、制作脳のキャパオーバーを痛感、秋にラオスへ一時逃避。

2020年『回想的作話のレコーディング』(CRISPY EGG Gallery/神奈川・淵野辺)

山岸耕輔

YAMAGISHI KOSUKE

山岸耕輔
YAMAGISHI KOSUKE
1995年石川県生まれ。2020年9月横浜市に移住。
2020年金沢美術工芸大学大学院を修了後、現在は東京藝術大学大学院メディア映像専攻に在籍。

山岸は水平器、照度計、金属探知機といった世界を探究するツールと共に、それを操る自らの身体が登場する映像作品を多く手がけている。

世界や他者とのコミュニケーションによって生じる些細な関心を作品(Work)の出発点に位置付ける山岸だが、自らの制作を「DIYをするような手つきで」と形容するのは興味深い。
Do It Yourself(やってみよう)の略語であるDIYという単語からは、即座にホームセンターや日曜大工というイメージが連想されるが、DIYはつまり専門業者や他人には頼まず自分でやるという態度のあらわれだ。だからこそ山岸の映像作品には自らが「やってみている」身体が殆どの作品に登場するのである。


室内の照度を計っては読み上げ、記述し、計測した場所に貼る 。この一連の動作を続ける3人の男を記録した『OVERWORK《照度計》』、12年間購入しづけた大量の週刊少年ジャンプを崩れるまで積み続ける『習慣と週刊《積む》』、コンクリート壁に投影された点と同じ場所にハンマードリルで穴を穿ち続ける『OVERWORK《ドリル》』など、ある特定のオブジェクトに対して向けられる「働きかけ」は、戯れの様にも労働の様にも映るだろう。これらの様子を撮影し記録する山岸の作品は、フィルムとしての映像作品というよりも、むしろ自らのパフォーマンスを記録したビデオアートかもしれない。


山岸は元々油画専攻の学生として絵画を学び、決して短く無い期間を絵画の制作にあてている。その時扱っていたモチーフは、点字ブロックや傘やマンホールといった日常と呼ぶにはあまりに変哲もないオブジェクトであり、人物は一切登場しない。それは現在の映像作品とは対照的に思える違いだが、その絵画の前にもまたキャンバスというオブジェクトに対し絵筆というツールで働きかける山岸の身体があった。
画家の仕事(Work)は世界を「描写する」ことである。山岸はいま背後にカメラを立て、そのを後ろ姿を映像として「書き出し」ている。本展ではどの様なワークが書き出されるのかぜひ会場で確認して頂きたい。

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「個展 - OVERWORK -  」展示風景
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2020「見知らぬ鏡台」映像9'52"
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「個展 - Weekly one-man show - 」展示風景

【作家略歴】

 

山岸耕輔

YAMAGISHI KOSUKE

 

1995 石川県生まれ

2020 金沢美術工芸大学大学院修士課程美術工芸研究科絵画専攻油画コース 修了

現在 東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻 在籍

主な展覧会

2020 「個展 - OVERWORK -  」(問屋まちスタジオ:石川)

2019「個展 - 習慣と週間 - 」金沢美大油画専攻外部アトリエ(石川)

2019「個展 - Weekly one-man show - 」金沢美大油画専攻外部アトリエ(石川)

2018「内灘闘争−風と砂の記憶−」風と砂の館、アートベース 石引(石川)

2017「境界線と夜」芸宿(石川)

2016「まだ帰りたくない」ギャラリー知(京都)

2016「百夜の歩み」アートベース石引(石川)

2015「F(L)ocking BiRDs 群鳥」芸宿(石川)

2015「oterart オテラート」常松寺(石川)

2015「百夜の歩み展」アートベース石引(石川)

2015  芸宿アンデパンダン展「バカ賞」芸宿(石川)

 

その他

2017 「奥能登国際芸術祭 KINOURA MEETING」プロジェクトメンバー

2017 「延岡アーティスト・イン・レジデンス」東海さるく

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