Venue

CRISPY EGG Gallery

3-17-5 Fuchinobe chuou-ku sagamihara-shi kanagawa-ken Japan

CRISPY EGG Galleryでは6月17日(月)〜23日(日)の期間、加藤真史、菊谷達史、鮫島大輔、竹下昇平による『The Optic nerve and The Devices』展を開催いたします。

 

本展は2018年に開催された「蒐集衆商2018」CRISPY EGG Galleryブースにおける展示の再構成を念頭に置いた展示となっております。

「蒐集衆商2018」では加藤真史、菊谷達史、鮫島大輔、吉原宏紀の四名の作品をセレクトし「風景」というテーマで展示構成いたしました。加藤、菊谷、鮫島は風景をモチーフとしており、ブースの壁を彼らの風景が埋め尽くし、その中心には吉原の磨き上げたアルミホイルの立体作品が鎮座。風景に囲われた吉原の立体作品の皮膚に風景が映り込む、という展示でした。

その後、会期を通して作品と向き合うに連れ、徐々にではありますが、「風景」という切り口は単純ではなかっただろうか、という思いが強くなってまいりました。

 

特に加藤、菊谷、鮫島は風景を描いていますが、実際には風景はあくまでメディウムに過ぎず、むしろその収集や出力の仕方にこそ「風景」の現代性を捉えているのではないか?と考えるようになりました。

​蒐集衆商2018 CRISPY EGG Gallery ブース

1.シーンの標本 // 菊谷達史

風景の収集や編集、出力は彼らにしてみれば制作の一つの過程でしかないため、作家自体がその部分を説明することはありません。しかし、2017年に開催された菊谷達史『Indoor landscape』のステートメントは、現代の作家が風景を取り扱う時の様子がよく見えてくる文章となっていたので一部ご紹介したいと思います。

 

あるふとした瞬間、唐突に出会った目が離せなくなったものをまずiPhoneで写真に収める。カメラロールに蓄積された写真を時折眺め、頭の中でGOと声がすれば絵に描く。画材は油絵、水彩、木炭、Photoshopなど本能的に選ぶ。その日の内に描く事もあれば、数年後描く事もある。収めた写真は僕の出くわした印象的な一場面であり情景である。シーンの標本をつくるように。時に見た通り、時に複数のイメージを混線させ、絵に描いて僕は目撃者から所有者になる。以上は大まかな僕の制作の過程である。

(2017年菊谷達史「Indoor Landscape」ステートメント一部引用)

 

菊谷を始め、加藤、鮫島、そして今回新たに加わった竹下昇平のいずれも、風景を現場で写生するということはなく、手持ちのデバイスによって収集しています。

 

一つの特徴として、加藤以外の三名は撮影にスマホの利用を主としていることが挙げられます。

その使用の最大の理由として、簡単に撮影ができ、細部を容易にチェックしやすく、またアーカイブ化も閲覧も素早くできるので、道具としての利便性を重視した結果であることは間違いないでしょう。

 

しかし、目の拡張機材として使用されているスマホやカメラ、また下絵の代価として使用されるプリンターが道具としての利便性以上に、その表現対して何も影響を与えていない、ということはあり得るのでしょうか?

 

実際に写生によって描かれた絵画と、デバイスによって収集された資料をもとに描くこととの間に、異なった「目」が立ち上がってくることは、日常的にスマホやカメラを使っている我々にとって、素直に理解することができる話かもしれません。

 

よく場面や風景などを描く際の表現として「その一瞬を切り取る」という表現がよく使われますが、実際にはそのような一瞬を描こうとしても文字通り「一瞬」で過ぎ去っていくため、切り取ることなど当然にできず、多くを想像で補わざるを得ません。仮にそのような場面に出くわしたところで、カメラを首からぶら下げていない限りはその一瞬に反応し記録することなど困難で、一般的な生活をしている人間には「一瞬を切り取る」ことはほぼ不可能に近かったはずです。

しかし、常に持ち歩き、また簡単に起動することのできるスマホは、本当に一瞬を切り取ることができます。(実際にはスマホは撮影の前からすでに撮影しはじめているので、果たして「一瞬」なのかどうかはまた別の問題としてある)またその一瞬はメモリーが許す限り保管できますので、記憶をはるかに超えた鮮明さと圧倒的枚数を採集、保管、閲覧することができます。これは菊谷の言う「シーンの標本」そのものだと言えます。

 

過去「風景画」にはある種の悠久さが描かれていたわけですが、スマホによる風景の切り取りは、時間的な奥行きなど求めるべくもなく、むしろ微分的に限りなく薄くスライスされた時間感覚がそこにはあるのだと考えることができます。

菊谷の風景を描いた作品はそのことがよく表れていると思います。

SATOSHI KIKUYA  "The BBQ eaters"   2017.Oil on Canvas.727×910mm.

2.日常の距離 // 竹下昇平

同じく竹下昇平も菊谷同様、資料の採集にスマホの利用を日常的に行っている作家です。

しかし、菊谷に比べ、よりスマホの利用がより内面化している作家であるかもしれません。

菊谷は油絵で描くことを意識するため、各所に絵画的文脈が作品の中に見え隠れします。そのため、モチーフは多岐に渡り、意味は複雑です。

 

一方、竹下は一貫して風景を描き続けています。その中でも特徴的なのが風景との距離です。

 

竹下の作品の多くには「少年」が隠れています。いるのかいないのかギリギリの範囲でたゆたうその少年は、いずれの作品でもおおよそ同じサイズで描かれています。

竹下はiPhoneで制作を行います。撮影もiPhoneのカメラですし、制作する際もiPhoneの画面を見て行います。iPhoneの画面を通された風景に佇む少年の距離感やサイズはおおよそ一定で、iPhoneの機能上おそらく10m〜15m程度の距離にいることが推測され、その周囲の風景も同様に半径10m~15m程度を射程としていることがよくわかります。

実際に手元にあるiPhoneで確認するとわかりますが、そのくらいの距離の風景をズームすると、微細なチェックができるギリギリな範囲であることが確認できます。

今後、スマホのカメラ機能はどんどん向上していくでしょうから、このことから、彼の描く一見すると「日常的な風景」と思われる風景画というものが、現行のデバイスの機能により規定されていることに気がつかされます。これは同時に、同じ現代を生きる私たちの思い描く「日常の風景」がデバイスによって規定されているのではないか?という疑念を感じずにはいられなくなります。

SHOHEI TAKESHITA   "ヒマワリ葉"   2018.Acrylic on Canvas.410×530mm.

3.画像を触る // 加藤真史

出力デバイスに注視すべき作家もいます。

加藤はスマホやカメラ、ネットの画像など複数の媒体から風景を切り取ってきます。これだと画像参照時の撮影媒体の違いは意味をなさず、取り込まれた画像は単にデスクトップ上でフラットに並べら、閲覧されるだけです。

一方で、彼の重要な作業は出力に現れます。画像をモノとして捉える加藤は、必ず紙に出力をします。出力し画像がモノになったあと、ちぎり再度つなぎ合わせるのですが、その作業は画像が「モノ」であることを否が応でも意識させることとなります。

画像というのものが、視覚だけでなく触覚にも共有されるために「出力」という作業を加える、という作品は出力デバイスがいかに作家にイマジネーションを与えているかをよく表しています。

仮にこれが現像された写真紙だった場合はどうでしょう?

写真は固く小さいため、手でちぎり編集しようとすれば少し困難が伴います。まともな写真を作ろうとすれば、現像するためにカメラ屋に行かねばなりませんし、またプリンターによる出力に比べれば高価なものになりますので、おそらく物質としての価値は、プリンターに出力された紙よりも重みがあります。その点、プリントされた紙であれば、いくらでも出力可能ですし、切ったり貼ったりが極めて容易です。この手軽さが、作家の中で「画像」の取り扱いとリンクしている、ということが考えられます。

MASASHI KATO  "Vacancy(Fence) #2"   2017.colored pencil on paper.555×830mm.

4.視線 // 鮫島大輔

上記三名と対をなすのが鮫島大輔でしょう。

鮫島は他の作家と比べると一回り上の世代となります。

そのためか画像やデバイスの取り扱いについて、あくまで道具であるという立ち位置を明確にしており、極めてドライです。

加藤同様、複数のデバイスを利用し描く作家ではありますが、加藤にとっての「モノ」として画像を捉えることはありません。

 

鮫島は「どこまでが作品か?」といういわゆる「額と壁」の問題に取り組んできた作家です。

描かれる画像はどこかで見たような住宅街やロードサイドであり、取り替え可能な風景です。切り取られた風景自体に意味はなく、むしろ球体や額、ネオンなど支持体にこそ作品の意味が込められています。

むしろ描かれた風景というのは、単に包装紙程度の価値しかないと言わんばかりです。

 

しかし、近年は撮影機材を想像させる作品が出てきました。

彼の描く風景のほとんどは太陽光を浴びた風景がメインで、モチーフに当たる採光はフラットに扱われていました。一方、近年のキャンバスに描かれた作品は撮影機材がどのようなものであるかが分かります。例えばフラッシュで炊かれた風景などがそれに当たります。

フラッシュは撮影者を起点として放たれる光なので、鑑賞者側から覗き込むような感覚を与えます。意味を排除してきた鮫島にとって、これは今までになかった傾向です。

 

風景のイメージをドライなまでに突き放していた鮫島ですが、その鮫島ですらデバイスが徐々に内面化されつつあることを意味していると言えましょう。

DAISUKE SAMEJIMA  "Stray goats"   2017.Oil on canvas.1620×1120mm.

5.最後に

本作品展を通して、現代の作家の眼、ひいては我々の目がいかにそのデバイスによって左右され、何によって規定されているのか?を考えるきっかけとなれば、と思っております。

また蒐集衆商に参加していた吉原宏紀の作品にも触れねばならないでしょう。

今回の展示では、「デバイス」という切り口であったため展示はしませんでした。しかし、アルミホイルという今日的な素材を使いながら、それを永遠とこすって彫像を作る、という行為はプリミティブでありながらも現代的です。

彼への考察はまた別の機会でご紹介したいと思います。

 

とは言え、この度の展示は作家自身が考えている内容をまとめたわけではなく、あくまで私が過去にそれぞれの作家と話した内容や、作品を通して感じた内容をまとめた展示となっています。

また各作家の作品も、デバイスや風景といった言葉で簡単に切り取れるもではなく、より複雑です。

 

皆様には「このような見方もできるのか」ということを楽しんでいただけたらと思います。

 

是非とも、本展示の作品をご高覧いただけると幸いです。

2019年5月

CRISPY EGG Gallery

石井弘和

『The Optic nerve and The Devices』

【参加作家】

加藤真史 菊谷達史 鮫島大輔 竹下昇平

【日程】

6月17日(月)〜6月23日(日)

会期中無休

【開廊時間】

月〜金 15時〜20時

土、日 13時〜18時

【会場】

CRISPY EGG Gallery

神奈川県相模原市中央区淵野辺3−17−5

【アクセス】

JR横浜線 淵野辺駅北口 徒歩4分

菊谷達史

1989 北海道稚内市生まれ

2011 金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科油画専攻卒業

2013 金沢美術工芸大学大学院修士課程美術工芸研究科絵画専攻油画コース 修了

主な展覧会

2019 「3331 Art Fair 2019」3331 Arts Chiyoda(東京)

2018 「個展 -Play a role-」創治朗(兵庫)

2018 「PREVIEW AiPHT」パークホテル東京 25F& 31F(東京) 

2017 「個展 -タッチアンドストローク-」ルンパルンパ(石川)

2017 「個展 -Indoor landscape-」CRISPY EGG Gallery(神奈川)

2017 「VOCA2017」上野の森美術館(上野・東京)

2016 「シェル美術賞 アーティスト セレクション  2016」国立新美術館(六本木・東京)

2016 「四井雄大展」ギャラリー数奇(愛知)

2015 「あきたアートプロジェクト-急がば廻れ-」アトリオン・茜屋珈琲店(秋田)

2015 「アーティストinレジデンス東海さるく 」リバーパル五ヶ瀬川(宮崎)

2015 「第18回岡本太郎現代芸術賞展 」川崎市岡本太郎美術館(神奈川)

2014 「菊谷達史・福田邦男展」ガレリアフィナルテ(愛知)

2014 「虹の麓 -反射するプロセス-」名古屋市民ギャラリー矢田(愛知)

2014 「個展 -月とグレープフルーツ-」金沢アートグミ(石川)

2011 「Nomadic circus troupe」 北海道立近代美術館

2010 「アウトレンジ2010」 文房堂ギャラリー(東京)

竹下昇平

1990年生まれ。

iPhoneで撮った写真を元に、都市と自然、ありふれた風景をアクリル絵具で描く。

 

2015年 

個展 眺めのいい部屋 (高円寺 pocke)

2016年 

新井五差路との二人展 すべて眺めのいい~ (spiid)

カオスラウンジ新芸術祭2016市街劇「地獄の門」参加 (もりたか屋)

水野健一郎presentsグループ展「得体」参加 (ギャラリー ルモンド)

バラックアウト展 参加 (旧松田邸)

2017年 

竹下双子展(双子の弟、竹下晋平との2人展   フォースも覚醒 (中央本線画廊)

グループ展 春のカド7 参加 (artgallery opaltimes)

2018年

Identity XIV curated by Mizuki Endo - 水平線効果 - 春のカドとして参加(nichido contemporary art)

個展 しんこうけい (あをば荘)

2019年

竹浪音羽との二人展

真っ直ぐ曲がる(にじ画廊)

加藤真史

1983  愛知県生まれ

2012  多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程絵画専攻油画研究領域 修了

 

 個展

 2012  「雨中に於いて傘をたたむ」 新宿眼科画廊(東京)

2013  「彼女の見た夢」 現代HEIGHTS Gallery DEN(東京)

2014  「You Think You’re Breathing Air(それは本物の息か)?」 TURNER GALLERY(東京)

「紺青のDiscipline」 GALLERY NIW(東京)

2015  「Between The Lines」 Gallery W(東京)

2016  「この腕の痛みは自分のものではない」 マキイマサルファインアーツ(東京)

2017   「人は歩ける距離のなかにある風景のうちに住んでいる」 アメリカ橋ギャラリー(東京)

2018   「舞台裏を観測する」 CRISPY EGG Gallery(神奈川)

2019    「Surfacing from Depth」 Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi(東京)

 

 

グループ展

 2012  「日常の変容」 BankART Studio NYK(神奈川)

        「脳に映るは移る日蝕」 アキバタマビ21(東京)

2016  「Gallery Selection」 マキイマサルファインアーツ(東京)

2017  「気配 - けはひ -」 フェイアートミュージアム ヨコハマ(神奈川)

 

 

受賞

2017  第20回 岡本太郎現代芸術賞展 入選   川崎市岡本太郎美術館(神奈川)

2019  アーツ・チャレンジ2019 入選  愛知芸術文化センター(愛知)

鮫島大輔

1979        兵庫県尼崎市生まれ

2005        多摩美術大学美術学部大学院美術研究科博士前期課程 絵画専攻修了

 

主な個展

2002 「トーキョーワンダーウォール都庁2002」東京都庁舎(東京)

2003  TWS-Emerging 037「WALK IN CUBE」トーキョーワンダーサイト本郷(東京)

2005 「+ beautiful world +」petal fugal(東京)

2006 「Everyday Journey ~次元を超えたランドスケープペインティングへ~」equal(大阪)

2008 「Wednesday Night & Thursday Morning」Art Center Ongoing(東京)以降2011、2014個展開催

2008 「round and round 」ヒロ画廊(東京)以降2015個展開催

2010 「ギャラリースタッフセレクション♯33 鮫島大輔展」相模原市民ギャラリーアートスポット(神奈川)

2010 「daisuke samejima - invisible spaces」super superficial gallery7(ロンドン/イギリス)

2015 「GLIMPSE」ヒロ画廊 伊豆高原(静岡)

2016 「AMBUSH」CRISPY EGG Gallery(神奈川)

2017 「STRAY GOATS」FEI ART MUSEUM(神奈川)

2018 「EXPLORER」伊豆高原ホテル五つ星(静岡)

2018 「FATHOM」1期:三渓園 旧燈明寺本堂(神奈川)2期:CRISPY EGG Gallery(神奈川)

主なグループ展

2002  第19回グラフィックアート「ひとつぼ展」ガーディアン・ガーデン(東京)

       フィリップモリス KK アートアワード2002「ザ・ファースト・ムーヴ」東京国際フォーラム(東京)

      「トーキョーワンダーウォール2002 入選作品展」東京都現代美術館(東京)

2003 「カウパレード東京in丸の内2003」丸ビル周辺のパブリックスペース(東京)

      「ONGOING vol.02」A.B.cafe(東京)以降2004、2005、2006参加

2004 「景展 ~シカクノイロハ~」相模原市民ギャラリー(神奈川)

      「トーキョーワンダーウォールの作家たち2000-2003」東京都現代美術館(東京)

2006 「第9回岡本太郎記念現代芸術大賞(TARO賞)展」川崎市岡本太郎美術館(神奈川)

      「Bunkamura Art Show 2006」Bunkamura Gallery(東京)

2007 「黒川紀章キーワードライヴ(展示クリエーション)」国立新美術館 (東京)

      「東京画 -ささやかなワタシのニチジョウのフーケイ」トーキョーワンダーサイト渋谷(東京)

2008 「Esquire cafe '08/ss アートとお茶しませんか?」表参道茶寮 表参道ヒルズ店(東京)

2010 「トーキョーワンダーウォール 2000-2009 10年!」東京都現代美術館(東京)

2011 「PLATFORM2011 -距離をはかる-」練馬区立美術館(東京)

2012 「On paper」シラパコーン大学サナムチャンドラー宮殿キャンパス アートギャラリー(ナコーンパトム/タイ)

2013  LOVE展 関連企画「LOVE TOKYO展」六本木ヒルズクラブ(東京)

2017 「間の構造 -虚空をよみとる-」岩崎博物館/ゲーテ座記念(神奈川)

2019 「ブレイク前夜展」ROPPONGI HILLS A/D GALLERY (東京)

 

主な受賞 その他

2002  トーキョーワンダーウォール公募2002 大賞受賞

2004 「ストリートペインティング事業第1弾 六本木トンネル」六本木トンネル歩道壁面(東京)