2018.5.10~5.27

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『「未来の幽霊」展示の補足の補足』​

CRISPY EGG Galleryでは6月30日〜7月15日までの期間、樽井英樹ディレクションによる『未来の幽霊』展を開催いたします。

参加作家は清水智裕氏、中村将志氏、若林亮二氏。そしてディレクターである樽井英樹を加えた4名の展示となります。

 

ディレクションの依頼は前回開催された野上薫氏による『器の作用』展に続き2度目となり、現代美術としては初めての企画となります。

各作家の経歴や説明は、樽井英樹によるテキストを参照していただくこととして、私は今回の展示について補足をしたいと考えています。

 

展示タイトルにある『未来の幽霊』とは実に不思議な言葉であります。

 

本来、幽霊とは過去の存在です。

死者が強制的に現在に出現するとき初めて幽霊となるのですから、これが「未来」となるのはとても倒錯しているように感じられます。

 

これは幽霊というものがどういうものなのかを考える必要があります。

街や建物で考えるとよくわかると思うのですが、普段私たちは自分の住む「街」を意識しません。パリでもニューヨークでもいいのですが、観光に行けばその街の風景は非日常ゆえ私たちは細かいところまで意識します。道路や建物の雰囲気、人の歩く速さや、匂いまでも観察します。ところが普段当たり前とする風景だと、とたんに私たちは見ることすらできなくなります。

 

しかし、あるとき突然近所の家が取り壊しで突如なくなってしまったとします。

 

ふと通りがかったとき、空っぽになった土地を見て、人は「ここに何があったか?」と想像してしまいます。それまで名前すら覚える気もなかった元住人に、いったいどのような人だったのか、どのような生活をしていたか、なぜここを離れたのか、を想像し、そして最後には少し寂しさなどを覚えたりもします。

 

そのとき私たちは「幽霊」を見ているのです。

 

では「未来」の幽霊とは何か。

未来とは直線に流れる時間軸の先のことですので、存在していません。

その未だ存在していない「未来」に、過去に存在していたものの蘇りである「幽霊」を感じるというのは、一種の「予感」に近いものだと言えます。

 

今回描かれている樽井氏の展示の世界観は一種のディストピアとして描かれています。本展示におけるそのディストピア的想像力は「幽霊の存在を予感する」ための装置として組み込まれたものなのだと表明したものが『未来の幽霊』なのでしょう。

 

さて、本展示をめぐり、樽井氏が繰り返し語るテーマ「身体」とは一体どうゆうものなのかを説明する必要があるかと思います。

 

彼は「反復」や「癖」といった不自由さを感じるときに人は身体の存在を感じる、と考えています。

前回CRISPY EGG Galleryにて開催された『FREEZE!』(2016)の切り絵シリーズや近年の塗り絵シリーズなどは、動きをゲーム的に規制することで身体が経験されるとし、当該シリーズの絵画はその痕跡であると考えているようです。

ただ、最近の樽井のテキストでは身体性を構成する要因として、「環境」や「経験」が伴うという考えを示すようになっています。

そのアイデアにおいては、「身体」の解釈は拡大しており、本展示でもメディアやネットといったテーマを取り扱う作家を組み込んでいることからも、本来身体とは別のものとされてきた外部も身体性を構成する要因ではないだろうか、という言説を取り込もうとしているようにみえます。

 

これは、身体と非身体の境界が曖昧になりつつある現代において、必然的かつ重要な問いであると思います。

 

 

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最後にギャラリーとして、なぜ樽井氏にディレクションを依頼したのかを書かねばならないでしょう。

 

樽井英樹氏は自身の個展とは別に、2014年にアキバタマビ21にてグループ展『素晴らしい人』展を企画。またさらには2017年に『ステーキの手渡し』(アートラボはしもと)でも同様に複数人による展示を企画しています。

 

個展を通して自らの主張を発表することとは異なり、このような複数人での展示企画は各作家の主張をしっかりと受け取りつつ、自身の表現へと接続させる必要があり、より高い次元での作品理解が必要になってくるのだと思います。

樽井英樹氏のキャリアも2008年に初めて発表してから約10年となり、若手から徐々に中堅へと移行していく時期です。私としては樽井英樹という作家の今後の活動を捉え直す時期に差し掛かっていると考えています。

 

今回の『未来の幽霊』はSFの世界観を軸に、とある物語を語る試みではありますが、その裏の目的は樽井英樹氏にとって重要なテーマの一つである「身体」を、全く違うアプローチで取り組んでいる作家の視点を通すことで、テーマをより深く掘り下げていくことを目指しています。

 

また企画を作れる作家は意外にもそう多くはないので、樽井氏の今後のキャリアに、ディレクターとしての活動が増え、幅広い活動へと繋がっていくことをギャラリーとしては強く望んでいるところです。

 

しかる理由により、この企画はグループ展と称しながらも、かなり樽井氏の個展的要素の強いものとなっています。

 

コントロールを強いられかねない本企画に快くご理解、ご協力いただいた清水智裕氏、中村将志氏、若林亮二氏には心より感謝をいたします。

 

是非とも皆様にはご高覧いただけると幸いです。

CRISPY EGG Gallery

石井弘和

『未来の幽霊』

2018年6月30日〜7月15日

ディレクター

樽井英樹

参加作家

清水智裕

中村将志

若林亮二

OPEN

金 土 日

13時〜18時

作家在廊日

樽井英樹 6月30日、7月1日、8日、15日

清水智裕 7月1日、13日

若林亮二 7月1日、8日、15日

CRISPY EGG Gallery

​神奈川県相模原市中央区淵野辺3-17-5