
パースペクティブ
の生態
INTRODUCTION
この度、CRISPY EGG Galleryでは鮫島大輔、高橋直宏、中田拓法の三作家によるグループ展『パースペクティブの生態』展を開催いたします。
この2年、私たちは自身の身体を強く意識する日々でした。
スポーツや性愛、病気などの身体に関わる営みはその持ち主自身に働きかけてきます。
しかし今は、もし自由に身体行為の実行を試みるものならば「あなたの身体は他人に害を与えうるもので、会話程度のものであっても身体を利用した危険行為なのだから、今すぐにやめるべきだ」と他者によって身体の自由を奪われてしまいます。
どうやらこの数年で、私たちの身体はどこかの誰かに預けられ、自分自身のものではなくなってしまったようです。
今回、いずれの作家も日常とは異なる視点や目線を利用した作品を制作をしています。鮫島の複数の6つの消失点や、高橋のレリーフをレイヤーのように重ね連なる表面、そして中田の3DCGを元にしたゲーム的カメラの視点とマチエールの再現。視点を通して身体を要求作品ばかりです。
美術による鑑賞というごく当たり前の行為を通して、今日的な身体とはどのようなものなのか、再発見するきっかけとなれば幸いです。
2021年8月
CRISPY EGG Gallery
石井弘和
INFORMATION
『パースぺクティブの生態』
鮫島大輔 高橋直宏 中田拓法
[日程]
2021年9月2日(木)~17日(金)[月火水 休]
[場所]
神奈川県相模原市中央区淵野辺本町1-36ー1(グレーの建物の方)
[時間]
13時〜18時
[アクセス]
JR横浜線 淵野辺駅北口から徒歩12分
※ 日程及び時間が急遽変更となる可能性があります。ご注意ください。
ARTISTS
鮫島大輔
DAISUKE SAMEJIMA
鮫島大輔は1979年 兵庫県尼崎市生まれ。
2005年多摩美術大学美術学部大学院美術研究科博士前期課程 絵画専攻修了
球体や額、メリーゴーランドの馬などを支持体として、郊外や都市の風景を描きこみ、まるでそこに空間が凝縮されたような作品を制作している。
モチーフはどこかの郊外の住宅街や地方のロードサイドによくみる何某かの店舗風景といった、無個性で匿名的でどこまでいっても繰り返されるパッチワークのような街の風景が描かれている。多くの日本人が「ここは私の住んでいる街のどこかだろうか?」と既視感を覚えることだろう。そのような風景を鮫島は強引に剥ぎ取り、立体物に貼り付けてく。
無個性であるが故に、どこを切り取っても同じで取り換え可能であるかのように思える風景たち。しかし、現実世界で広がっていたパノラマが裏返されて、球体やメリーゴーランドの馬などといった立体物に貼り付けられることで、凡庸だった風景は全く別の意味を生み出される。

『Flatball 2021 No.02』(2021)
φ170mm
Acrylic paint, Acrylic resin

『Flatball 2021 No.01』(2021)
φ170mm
Acrylic paint, Acrylic resin

『Flatball 2020 No.02』(2020)
φ170mm
Acrylic paint, Acrylic resin

『pond 01』(2018)
1620×1120mm
Oil on canvas
【作家略歴】
1979 兵庫県尼崎市生まれ
2005 多摩美術大学美術学部大学院美術研究科博士前期課程 絵画専攻修了
現在 多摩美術大学 美術学部統合デザイン学科、美術学部絵画学科油画専攻 非常勤講師
主な個展
2002 「トーキョーワンダーウォール都庁2002」東京都庁舎(東京)
2003 TWS-Emerging 037「WALK IN CUBE」トーキョーワンダーサイト本郷(東京)
2006 「Everyday Journey ~次元を超えたランドスケープペインティングへ~」equal(大阪)
2008 「Wednesday Night & Thursday Morning」Art Center Ongoing(東京)以降2011、2014個展開催
2008 「round and round 」ヒロ画廊(東京)以降2015個展開催
2010 「ギャラリースタッフセレクション♯33 鮫島大輔展」相模原市民ギャラリーアートスポット(神奈川)
2010 「daisuke samejima - invisible spaces」super superficial gallery7(ロンドン/イギリス)
2015 「GLIMPSE」ヒロ画廊 伊豆高原(静岡)
2016 「AMBUSH」CRISPY EGG Gallery(神奈川)
2017 「STRAY GOATS」FEI ART MUSEUM(神奈川)
2018 「EXPLORER」伊豆高原ホテル五つ星(静岡)
2018 「FATHOM」1期:三渓園 旧燈明寺本堂(神奈川)2期:CRISPY EGG Gallery(神奈川)
2019 「FISH GONG」Hideharu Fukasaku Gallery Roppongi(東京)
主な受賞 その他
2002 トーキョーワンダーウォール公募2002 大賞
2004 「ストリートペインティング事業第1弾 六本木トンネル」六本木トンネル歩道壁面(東京)
高橋直宏
NAOHIRO TAKAHASHI
高橋直宏は1991年北海道生まれ。2020年金沢美術工芸大学大学院博士後期課程美術工芸研究科彫刻分野にて博士(芸術)学位取得。
木を素材として、積み木のように組み上げられた人体やレリーフを制作している。
高橋の作品は一見、ブランクーシのような抽象的な形態の連なりで構成された人体像のように見えるが、その木の塊をぐるりと見て回ると、そこに正面のようなものはなく、大小複数のレリーフとイメージが表面に張り付き重なり合っていることに気がつく。
視点や見方によって移り変わる造形は、主体と客体の区分が確かなものなどではなく、お互いが常に干渉し揺らいでいることを意味している。
「可変的な身体は、私たちの身体の正しさに揺らぎを働きかける」(高橋直宏作品集2P引用)
【自己の制作について】
私は、バラバラな身体、複数の部位、見る位置で見え方が変わるような人体像を制作している。このような可変的な身体は、私たちが持つ「正しさ」に対して揺らぎを働きかける。
主体や身体といったものは確固たる一つのものがあって、自己を定め、他人に働きかけているのではなく、むしろ他者や外部との重なり合いによって、揺らぎながら複数存在するといえる。
たとえば慣れ親しんだ土地とそうでない所では体の動かし方が、親しい人とそうでない人と接する場合では心の働きが異なるし、他の国に行けば私たちは日本人でありながら外国人という身体を得るだろう。
他者や外部との関係、距離感は「接続か、分断か」といった極端なものではなく、絶え間なく変化している。バラバラの人体は自己と他者あるいはそれ以外のものとの“きわ”で揺れ動く像であり、私はこれによって関係性の微細な振動を捉えようと試みている。
高橋直宏
2019「展でのふるまい」あをば荘(東京)での風景

『聖杯』(2021)
木に着彩
1240×320×500mm

『箱庭で遊ぶ』(2019)
木に着彩
2350×1280×650mm

『噛み合わせについて』 (2019)
木に着彩
1660×390×270mm
【作家略歴】
1991 北海道岩見沢市に生まれる
2015 金沢美術工芸大学 美術工芸学部 美術科 彫刻専攻 卒業
2017 金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科 修士課程 彫刻専攻 彫刻コース 修了
2020 金沢美術工芸大学大学院 博士後期課程 美術工芸研究科 彫刻分野 満期退学
博士(芸術)学位取得
・個展
2017
「およそ不合理な身ぶり」/ mbf付属アートスペース(群馬)
「D、D、D」/ 芸宿(石川)
2021
「BEACH」/彗星倶楽部(石川)
・グループ展
2021
「故郷」/新宿眼科画廊(東京)
「ポリフォニックなプロセス+プレッシャー」/はしっこ、武蔵野美術大学 (東京)
「群馬青年ビエンナーレ2021」/群馬県立近代美術館(群馬)
2020
「sequence ART 2020」/sequence MIYASHITA PARK(東京)
「EUKARYOTE POP UP SHOW」/WHAT CAFE(東京)
「整頓された混乱」/ gallery TOWED (東京)
「EUKARYOTE GROUP SHOW」/EUKARYOTE(東京)
「gallery TOWED ドローイング展」/ gallery TOWED (東京)
2019
「TRACTOR BEAM vol.2 -TALISMAN-」/WALLA(東京)
「別人」/ 芸宿103(石川)
「美術部展3」/ ビリケンギャラリー(東京)
「東京インディペンデント2019」/東京藝術大学 陳列館(東京)
「とりあえずそこに行くとして、」/ 問屋まちスタジオ(石川)
「Future Artists Tokyo “EЯLection of Anonymous”」/東京国際フォーラム(東京)
「The Metamorphosis」/ EUKARYOTE(東京)
2018
「河口龍夫研究室企画展 幻の二人展」/ アートベース石引(石川)
「出版記念」/あをば荘(東京)
「内灘町歴史民族資料館 風と砂の館企画展 内灘闘争‐風と砂の記憶‐」 / 内灘米軍試射場跡(石川)
「TRACTOR BEAM vol.1 / ataxia」/ 芸宿103(石川)
「SCOPES」/ しいのき迎賓館(石川)
「美術部展2」/ ビリケンギャラリー(東京)
2017
「アートアワードトーキョー丸の内2017」/ 新東京ビル(東京)
「河口龍夫研究室企画展 空想の気配」/ アートベース石引(石川)
「美術部展」/ ビリケンギャラリー(東京)
「芸宿アートミーティング」/ 芸宿(石川)
・受賞
2021 「群馬青年ビエンナーレ2021」入選
2019 KANABIクリエイティブ賞2019 卒業・修了制作部門 学長賞
2017 「アートアワードトーキョー丸の内2017」入選
2016 KANABIクリエイティブ賞2016 卒業・修了制作部門 学長賞
・パブリックコレクション
2019 《噛み合わせについて》金沢美術工芸大学
2016 《風景の網目》金沢美術工芸大学
中田拓法
TAKUNORI NAKATA
中田拓法は1982年埼玉県生まれ。2014年に多摩美術大学美術学部大学院美術研究科博士前期課程 絵画専攻修了
デジタル技術によって製作された3DCGや空間をモチーフに絵画製作を行っている。
彼の制作過程は緻密な準備から始まる。まず、ゲームのようにプレイ可能なバーチャルな空間をコードの段階から組み立て、完成後、その空間やモノをモチーフに風景画や静物画としてキャンバスに描いている。この過程にどのような意味があるのだろうか。
例えば水。物理空間にある水は光ったり、透明だったり、揺らいでいたり様々な顔を見せてくれる。それを絵画として再現するとき、紙やペン、絵の具、また人の目の情報処理、社会的背景など物理や文化の制約を経て、最終的に水という記号が描かれることになる。
中田はそこにさらにコードという別言語による制約を重ねることで、新たな恣意性(ソシュール)を生み出そうと試みている。

「アクアリウム」(2020)
キャンバスにインクジェットプリント・油彩
38.0x 45.5cm

『鹿の森』(2020)
キャンバスにインクジェットプリント・油彩
53.0x 45.5cm

『カラフルな木』
(2019)
キャンバスにインクジェットプリント・油彩
53.0x 53.0cm
【作家略歴】
1982年 埼玉県生まれ
2012年 多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業
2014年 多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻油画研究領域修了
個展
2019年 「霊感と絵画」(GALLERY MoMo Projects / 東京)
2016年 「Light」(GALLERY MoMo Projects / 東京)
2014年 「夏の裏」(GALLERY MoMo Projects / 東京)
2013年 「中田 拓法 展」(ANOTHER FUNCTION / 東京)
グループ展
2021年 「ASYAAF」(弘益大学校現代美術館/ソウル・韓国)
2020年 「再考 | Reflection」(GALLERY MoMo Ryogoku / 東京)
2020年 「ASYAAF」(弘益大学校現代美術館/ソウル・韓国)
2016年 「本江 邦夫プロジェクト展の軌跡」(ANOTHER FUNCTION / 東京)
2015年 「ASYAAF」(文化駅ソウル284/ソウル・韓国)
2014年 「少し、あかるくなる」(相模原市民ギャラリー / 神奈川)
2011年 「ワンダーシード」(トーキョーワンダーサイト渋谷 / 東京)
2011年 「PrologueⅦ」(GALLERY ART POINT / 東京)
2010年 「シェル美術賞」(代官山ヒルサイドフォーラム / 東京)