CRISPY EGG Galleryでは8月31日〜9月16日の期間、笹田晋平による『Dance in the palace』展を開催いたします。

 

笹田晋平(1984年生まれ)はデビュー当時より、日本美術の再インストールを試みてきた作家です。美術というものが明治に輸入されて以降、人工的に作り上げられたものであった歴史を踏まえ、もしかしたら別に持ち得たかもしれない日本美術のifを想像し、近代を作る際に選択されなかった「釈迦涅槃図」やバロック様式を引用することで、もしかしたらありえたかもしれない日本美術を再構築し直そうとしてきました。

一方、その試みが歪であることは避け難く、「釈迦」と「シャケ」をかけたダジャレや生肉という滑稽なモチーフを作品に組み込むことで、作家がその歪な試み自体について自嘲気味な構えでいることを示唆しています。

 

近年は作家がかねてから尊敬していたニコラ・プッサン(1594~1665)の方法論を、現代日本において再現しようとする試みを行っています。

 

プッサンは非常に綿密な構図と図像の解釈を画面に詰め込んだ、17世紀を代表するフランスの画家です。

過去の巨匠というものは概ねその人生や時代背景と重ね合わせて論評されるものですが、プッサンの場合はそれとは異なり、彼についての論評は作品の図像学的な解釈を主とするものがほとんどです。

 

その「絵画的正しさ」を求めた作品は、おそらくはフランス人でありながらローマの上位階層の人々を顧客として相手するとき、プッサンが外国人であるがゆえに、当時ローマの顧客たちが共有していた古代ギリシャの研究やキリスト教のハイコンテクストな文脈をローマ人以上にふんだんに盛り込み、彼らにとって良き仲間であることをアピールし、顧客の関心強く引く必要があったからなのかもしれません。

笹田自身も美大や美術予備校に通った経験はなく、アカデミックな美術教育(美大出身であることがアカデミックな教育を受けてきたことになるのかどうかは、また別の問題とする)を受けてきたわけではない人間として笹田がプッサンに惹かれるのは、美大出身者が大半を占める美術業界において、彼自身が外国人だからなのかもしれません。

 

 

本展では女性や城が描かれています。

彼女たちは現代の日本におけるアイドル(偶像)であり、その背景はpalaceつまり皇居となります。

描かれる皇居や女性たちは平成最後の年においてどのような意味を持ちうるのか。

 

皆様には是非ともご高覧いただきたく思います。

 

CRISPY EGG Gallery

石井弘和

【Statement】

「西洋古典主義」×「皇居」×「アイドル」

 

今回の展示では、西洋古典主義に倣った絵画を現代日本のモチーフで描くということをテーマにしています。

舞台は、空と緑、そして象徴的な建造物がある場所として、「皇居」を選択しました。人物は現代日本文化の象徴である「アイドル」をイメージしています。

以前あるアイドルと仕事をした際、現代美術のメインストリームである「カワイイ」を体現した存在であることや、差別化を図るために様々なコンセプトを打ち立てている点、さらには舞台での演劇性など、非常に多くの感銘を受けました。

「アニメや漫画などのオタク文化を日本美術と繋げ、2次元方向へ絵画を押し込むこと」が今の1つの潮流ならば、それに対抗する方向性として「日本に根付かなかった印象派以前の西洋絵画の方法論を用いて、もう一つのオタク文化であるアイドルを描く」というのは面白いと思ったのです。

今年は平成最後の年です。それを象徴する行事やモチーフが彼女たちの身振りや持ち物に隠されています。西洋古典主義絵画の巨匠、二コラ・プッサンの絵画にあるような寓意をぜひ読み取ってみてください。

 

2018年8月

笹田晋平

放蕩息子の帰還中

Oil on canvas 130.3×97cm 2018 Courtesy of Ohshima Fine Art