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2017.10.27~11.12

SATOSHI KIKUYA

Indoor landscape

CRISPY EGG Galleryでは10月27日より、菊谷達史『Indoor landscape』展を開催いたします。

 

菊谷達史1989年北海道生まれ。2013年に金沢美術工芸大学大学院を修了後、金沢を中心に作家活動を行っています。

菊谷の近年の作品の特徴は日常風景という極めてローカルなモチーフを扱っているにもかかわらず、菊谷自身がいかに「画家的であるか」という態度に収束することにあるといえます。

油絵の画家でありつつも西欧的な立体感や装飾性を排し、日本的油絵を追求した児島善三郎のような筆致で描かれた風景。

日本の油絵の原点である高橋由一へのオマージュのシリーズ。

そして本展示のタイトルでもある「Indoor landscape」は神田日勝の「室内風景」の引用。

これらの作品はその中で自己表現をするといった類のものではなく、「画家」というものを演じるセルフパフォーマンスとしてみることができます。

しかし、菊谷のセルフパフォーマンスはグローバルに対抗するための手段として、またはグローバルなアートの市場において成功することを目的にローカリティを誇張する手段としてではなく、文人画的な発想、粗く言えば「画家であろうとする自分が描いたことに価値がある」という態度をより明確に示そうとしているためのものなのです。

​◇

 

本展示は北海道の農民として生きた神田日勝の代表作「室内風景」の引用とのこと。室内で座り込む神田の周りには新聞記事がびっしりと貼り巡らされています。この絵は、新聞などのメディア(媒介物)を通して北海道というローカルな地から世界をみている気になっていた神田が、「世界と対峙しているつもりであったが、もしかして自分と世界は全く関係がないのでは?」と不安を感じているかのように見えます。

この不安を表現するにあたって、高橋由一のように原点でもなく、児島善三郎のように権威でもない極めてローカルな画家を選んだところに、今の彼の心境を見て取ることができます。

 

皆様には是非ともご高覧いただきたく思っております。

 

2017年10月20日

CRISPY EGG Gallery

石井弘和

Works

SATOSHI KIKUYA

菊谷 達史

Statement

あるふとした瞬間、唐突に出会った目が離せなくなったものをまずiPhoneで写真に収める。カメラロールに蓄積された写真を時折眺め、頭の中でGOと声がすれば絵に描く。画材は油絵、水彩、木炭、Photoshopなど本能的に選ぶ。その日の内に描く事もあれば、数年後描く事もある。収めた写真は僕の出くわした印象的な一場面であり情景である。シーンの標本をつくるように。時に見た通り、時に複数のイメージを混線させ、絵に描いて僕は目撃者から所有者になる。以上は大まかな僕の制作の過程である。

様々な態度と立場と目的で絵が量産されている今日は、かつてない程絵を描く人口が多い時代ではないだろうか。1世紀前の絵画を図版や画像や美術館で普通に観れるように、今を100年後から観られる日も必ず来るのだ。その頃は油絵は生産中止になっているかもしれない。アニメやVRが古典になっているかもしれない。その時今日の絵画は一体どう写るだろう?などと、考えてみても仕方のない事をついつい考えてしまう。例えば今、甲冑をモチーフには出来ても由一のようには描けない様に、その時その国その土地に生きていたからこそ、受ける事ができた衝撃や描く事ができた絵画というものは確実にある。それはきっと一つや二つではないはずだ。

 

では自分には一体何が描ける?僕が最近気掛かりなのはそればかりだ。

​菊谷達史

Questionnaire

今回の展覧会タイトルの「Indoor landscape」。 「屋内の風景」と訳すのでしょうか。 このタイトルの意味をお教えください。

 

(菊谷)

「Indoor landscape」はそのまま「屋内の風景」を意味します。これは北海道の洋 画家神田日勝 (1) の代表作「室内風景」からの引用なのですが、彼は画家であると 同時に農家でもあり、農作物や家畜など身の回りのたわいもない物事を奇妙な圧力 をもって描きました。それらはある意味彼自身の自画像であったとも思えます。 いま1日の生活の大半をディスプレイを見て過ごす自分と、生きていれば80歳の彼 とでは相当異なった風景を見ているはずにも関わらず、この同郷の画家(といって も日勝は東京出身ですが)に僕は不思議とシンパシーを感じていて、オマージュと してのこのタイトルとしました。

(1) 神田日勝(1937-1970)東京生まれ。1945年東京大空襲に遭遇し北海道鹿追町に疎開。中学生の頃より兄 の影響で油絵を始め、東京芸術大学に進学した兄に代わり農業を継いだ。農家であり画家であった彼はベニヤ板 にペインティングナイフを使った独自の具象画を描いた。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%94%B0%E6%97%A5%E5%8B%9D)

菊谷さんは「身の回りのものごとを描く」という古典的な画家像を実践するこ と自体が作品であるように思われます。 今回の展示タイトルも、神田日勝からの オマージュとのこと。 そのことを踏まえると、ここ数年、繰り返し描かれている 近代の画家と重ね合わせるようなタイプの絵は、画家的であることを加速度的 にリマインドし続けているように思えます。 なぜ、このように画家的であることに重きを置くのでしょうか 
政治的意図はないとのことでしたが、あまりにも現代的であるように感じられます。
この内と外を分ける輪郭は何を意味しているのでしょうか?

(菊谷)

僕は2007年美術大学進学を機に本格的に油絵を始めました。絵を描ける専攻を希望していたので、日本画か油絵の二択でとりあえず後者を選んだという程度だったので油絵への関心も薄かったのですが、それでも継続しているとだんだん魅力も感じるようになり今も継続しているわけです。 はっきりとした時期は定かではありませんか、いつの頃からか東洋人である自分が油絵を扱っている事を不可思議に思い、作品の方向性に悩みを抱く様になりました。

それは今振り返るとアートマーケットなどでよくみられる作品の欧米化/日本化 の狭間でどちらにも振り切りようがない自分に当惑していた。という事なのですが、ちょうどその頃薦められた画集をみて唐突にゴッホが好きになりました。彼は 浮世絵からインスピレーションを得て自作に応用していますが、異文化を享受して ハイブリッドにしていくこの感覚は、どんな時代どの場所でも行われてた事なのだと、僕を励ましてくれるものでした。ゴッホをはじめヨーロッパの諸芸術を積極的 に享受し日本に移植、帰化させていった戦前の近代洋画家たちに徐々に自分のルー ツを見出すようになり、そういった背景もあって「制度としての洋画」とか「舶来 品としての油絵具」といった文化的側面からみる油絵に、また美大、画壇、サブカ ル、イラストレーション、現代美術といった日本の絵における「棲み分け」、その それぞれの残滓や混成度のようなものに関心が向くようになりました。 僕は古典的な画家というよりは典型的な画家像みたいな物を通して、題材やモチー フに依拠しない現代の「日本人の油絵」 (2) があるとすればどの様な物か、それは 本当に可能なのかを検証しているのだと思います。

(2)福岡県の洋画家、児島善三郎(1893年-1962年)の提唱した絵画観。善三郎らが提唱する「日本的洋画」の 主張—日本的風土に則したフランス・フォーヴィスムの受容—は広く画壇に波及するところとなる。(Wikipediaより引用)

③2016 年以降のモチーフは Instagram 的距離感のものが目立ちます。すなわち、 ご自身の家や自画像、ちょっとしたお出かけの風景などです。 私は、菊谷さん自身の世界を覗き見る「窓(メディア)」が変化したのではない のかと考えているのですが、この変化は、何か意図したところはあるのでしょうか? 

(菊谷)

Instagram的距離感の物を描き始めたのは実は2012年からです。それ以前の2008〜 2011年はイラストレーション的なフォルムを下敷きに表現主義的な感覚で、ちょうどPhotoshopでコピーアントペーストする様に能動的に絵を生産していました。それらが様式化しバリエーションとなってしまったのが2012年頃で、ちょうど上述の悩みが出てきた時期です。それに対する突破口を探る一つが、それまでは積極的には描こうと思わなかった自画像や出先でみた花や、知人友人がいる風景、アトリエ の愛猫といった私生活圏内にあるものでした。 大体2年程そういったモチーフをそれ以前よりは受動的な態度で禁欲的に描いていましたが、同時期に関心が高まっていた近代洋画のエッセンスを作品に取り入れだし、初めて発表したのが2015年の岡本太郎現代芸術賞展になります。 Instagram的距離と言われるとまるで現代を形容しているかのようで、少し大袈裟に 聞こえますが、出先の風景や身近な食材、異国の珍品といった類は当たり前に画題 として扱われてきた物なので、言い換えればゴッホにも高橋由一にもInstagram的距 離感は認められるように思います。 現在はここ数年の流れを俯瞰して見れるようになってきたので、今回の個展ではこのような制作の流れを混線させいくような物にしたいと考えています。  

Interviewer Hirokazu Ishii

Respondent Satoshi Kikuya

​菊谷達史

 

【経歴】

1989 北海道稚内市生まれ

2011 金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科油画専攻卒業

2013 金沢美術工芸大学大学院修士課程美術工芸研究科絵画専攻油画コース 修了

 

主な展覧会

2017 「VOCA2017」上野の森美術館(上野・東京)

2016 「シェル美術賞 アーティスト セレクション (SAS) 2016」国立新美術館(六本木・東京)

2015 「個展-サーモンピンクと黒い花-」ASAGI ARTS(東京・銀座)

2015 「第18回岡本太郎現代芸術賞展」川崎市岡本太郎美術館(神奈川)

2014 「菊谷達史・福田邦男展」ガレリアフィナルテ(愛知)

2014 「個展 月とグレープフルーツ」金沢アートグミ(石川)

2014 「虹の麓 -反射するプロセス-」名古屋市民ギャラリー矢田(愛知)

2013 「個展 -UNDRAMATIC-」gallery COEXIST-TOKYO(東京・木場)

2012 「個展 -FLAME REACTION-」ギャラリー点(石川)

2011 「Nomadic circus troupe」 北海道立近代美術館(北海道)

2010 「個展 -LITMUS-」Kapo gallery(石川)

2010 「アウトレンジ2010」 文房堂ギャラリー(東京・神保町)

その他

2016 「日本・ベルギー国際交流美術展  - WEWANTOSEE - 」金沢21世紀美術館市民ギャラリーB(石川)

2016 「アートツーリズムへの発地」THE SHARE HOTELS HATCHi(石川)

2016 「四井雄大個展」ギャラリー数奇(愛知)肖像画を制作

2015 「あきたアートプロジェクト-急がば廻れ-」アトリオン・茜屋珈琲店(秋田)

2015 「アーティスト・イン・レジデンス東海さるく」リバーパル五ヶ瀬川(宮崎)

2015 「3331 Art Fair 2015 ‒Various Collectors' Prizes‒」3331 Arts Chiyoda(東京・外神田)

受賞

2015 「神戸ビエンナーレペインティングアートコンペティション」審査員特別賞

2014 「第18回岡本太郎現代芸術賞」入選 (菊谷達史と四井雄大)

2013 「ワンダーシード2013」入選(2011年同)

2012 「ファン・デ・ナゴヤ美術展2014」企画

2011 「シェル美術賞2011」入選

2011 「第7回世界絵画大賞展」優秀賞

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